第3回 繋ぐ塾 〜日系移民の歴史を辿るウォーキングツアー
2024年9月20日(日)10am〜1:00pm @Steveston
スティーブストンは初期の日系移民たちが困難に立ち向かい、その基盤を築いた場所です。日本ではあまり知られていない彼らの歩みを若い日本人皆さんに知ってもらうべく、ベテランガイドの美和がウォーキングツアーを開催しました。
当日はなんと!雨という天候にも関わらず、参加者10名の方が朝早くからスティーブストンまで遥々来てくださいました!
小学校や高校を卒業してからは、歴史に触れるツアーに参加する機会がグッと減ったと思うので、今回は”学びのツアー”として、大人の遠足という感覚で楽しんでくれたようです。
スティーブストンは美しい海辺で美味しいシーフードを楽しめるだけでなく、ドラマ・映画のロケ地や様々な歴史的な施設を巡ることもできます。今回のツアーでは日系移民に関連のある歴史的施設を中心に7ヶ所を巡りました。
Murakami House
この家は、かつてスティーブストンで漁師として成功を収めた日系カナダ人家族、村上音吉(Otokichi)と浅代(Asayo)夫妻、そして10人の子供たちが住んでいた家屋です。彼らは、スティーブストン海岸沿いに形成された約250世帯の日系コミュニティの一員として、この場所で生活を営んでいました。
しかし、第二次世界大戦中、村上家は他の22,000人以上の日系カナダ人と共に強制的に家を追われ、財産も没収されました。家族はカナダ西海岸から少なくとも100マイル離れた収容所や労働キャンプ、農場へと送られることとなりました。
ここでは、村上家の物語を通じて、スティーブストンの繁栄から戦時中の日系カナダ人の強制収容、そして戦後の苦難に至るまで、彼らが経験した歴史に触れることができます。
現在は復元され、当時の生活や歴史を伝える施設として一般公開されています。
参加者の皆さんは、海外に簡単に来られなかった時代に、人生を賭けて移住してきた日本人がいたことを知り、大きな衝撃を受けていました。私たちは現在、留学やワーキングホリデー、旅行などで簡単に日本と海外を行き来できる時代に生きていますが、当時の移住者たちが持っていた覚悟の重さを目の当たりにし、感慨深い表情で展示品を見つめていました。
Richmond Boat Builders
かつて漁業が盛んだった時代に漁船の建造を行っていた造船会社。この造船所では日本や中国からの移民も多く働いており、スティーブストンの漁業産業を支える重要な役割を担っていました。
参加者の皆さんは、当時使われていた工具などを眺めながら、当時の人々がどのような思いでこの地に根を下ろし、日々の仕事に励んでいたのかと、想像を膨らませていました。
そして展示品を通して、彼らの暮らしの厳しさや努力の跡を感じ取ることで、異国の地で生き抜くための覚悟や苦労を深く理解しようとしている様子が伺えました。
Historic Stilt Houses
地域のコミュニティであるブリタニアは漁期の間、労働者が生活できる家、高床式の「knock down houses(ノックダウンハウス)」を提供していました。ブリタニアは文化的に多様な場所でしたが、中国人・日本人など文化的グループごとに分かれており、生活環境も区別されていました。
Chinese Bunkhouse
ここは、かつて缶詰工場で働く中国人労働者が暮らしていた宿舎です。最大100人の中国人男性が集い、狭いベッドで寝泊まりしていました。この施設は非常に簡素で、快適さや文化的な配慮は一切なく、彼らはその環境に加えて驚くほど低い賃金と厳しい食事条件に耐えながら生活していました。
彼らの歴史をショートムービーを通しても学びました。
ゴールドラッシュや鉄道の仕事を夢見て中国から渡ってきた中国人たちが、結局は仕事も十分な収入も得られず、中国に残した家族とも会えないまま、缶詰工場の過酷な環境で生活を強いられていたことを知り、参加者の皆さんは驚きを隠せない様子でした。
Steveston Nikkei Memorial
ここは、日系カナダ人の歴史と貢献を記念した場所です。特に、第二次世界大戦中に起きた強制収容によって家や財産を奪われ、コミュニティから引き離された22,000人以上の日系カナダ人の人々を追悼しています。
Japanese Fishermen’s Benevolent Society Building
この博物館は、かつてスティーブストンの日本語学校の管理事務所や病院として使用されていた建物です。この歴史的な建物には、現在スティーブストンの日系カナダ人コミュニティに関する展示が収められています。最初の日系人がスティーブストンに移住したのは1800年代にさかのぼりますが、第二次世界大戦中に彼らは強制的に住まいを追われました。戦後、一部の人々が戻り、コミュニティは再び成長し、発展を続けました。ここでは、漁業や農業、文化芸術、教育、剣道や柔道などの武道を含む、コミュニティが地域にもたらした多くの貢献とともに、その歴史を探ることができます。
日本からカナダ・バンクーバーに修学旅行で訪れる学生たちが、スティーブストンの歴史的施設を巡り、日系移民の歴史にも触れられるツアーが組まれると良いですね。
The Gulf of Georgia Cannery
ここは、スティーブストンにある国定史跡で、かつての漁業と缶詰産業の歴史を伝える博物館です。最盛期には、西海岸の最大の缶詰工場の一つとして機能していました。
現在は当時の缶詰産業や漁業に関する展示やツアー、教育プログラムを提供しています。展示内容には、缶詰の製造工程、当時の労働者の生活、そして地域に貢献した多様なコミュニティについての資料があります。
チケットが有料だったため希望者のみの入場としましたが、参加者全員が参加してくれました。皆さんはユニークな展示や館内のさまざまなアクティビティを楽しみながら、学びを通して繋ぐ塾メンバーとも親交を深めていました。
The Haunted Sea
ハロウィンの季節ということもあり、ハロウィンにぴったりな面白い展示も行われていました。砂浜から深海まで、ここ周辺の沿岸の水域に住む豊かな生命について、ツアーガイドの説明とともにより深く学ぶことができました。
ツアーの最後には、美和特製のおにぎり&主催者かずまさん手作りブラウニーを食べながら、カナダに挑戦しにきた経緯や今までの経歴など共有しあう機会を設けました。
まとめ
カナダの日系移民の歴史に触れて、参加者の皆さんは色んな事を感じられたと思います。 現在のように気軽に日本に帰ることができない時代に、人生を賭けてカナダへ渡った日系移民たちの覚悟は計り知れません。 第二次世界大戦など、激動の時代を力強く生き抜いた彼らの歴史を知ることで、今私たちがいかに恵まれた環境にいるか、改めて実感する事ができました。
一方で私たちもまた、第三次世界大戦が既に始まっているとも言われており、いつ何が起きるかわからない不安定な時代を生きています。 このツアーが、参加者の皆さんにとって私たちに今何ができるのかを考える一つのきっかけになったのではないかと思います。
これからも皆さまとのご縁を大切にしながら、『人と人をつなぎ、グローバルな人材へ』というミッションのもと、繋ぐ塾の活動をさらに広げてまいります。
繋ぐ塾とは
日本カナダ商工会議所では、2024年9月から毎月2回、バンクーバーのガスタウンにあるSELC Language Collegeで開催しています。決められたお題をもとに参加者が主体となって意見交換を行う場です。グローバル人材を育成するために、私たちは参加者の方達に相手を理解・尊重しつつ、日本語や英語で自分の意見を主張できるようになってもらう事を目的としています。